基盤研究Cの「個室ユニット型特養におけるインカム導入が介護職員の負担軽減に及ぼす効果」の一環で取り組んだ研究について,主にM2の陳淑君さんが2018-2019年度に取り組んでくれた成果を掲載します.
<概要> 2017年度にインカムを導入した特養Hで,インカム導入の長期的効果を測定した.その結果,導入9か月後では明確に表れなかった歩数軽減効果が,導入2年後の調査では29.3%も有意に減少する結果を得た(p<0.05).インカムの導入の定着により,介護職員の身体的負担の軽減に寄与することを示唆する結果を得た.
一方,介護行為の精神的負担を把握するため,(株)Arblet社が開発した3波長光学式センサー等により自律神経バランスを測定可能なリストバンドを介護職員に装着してもらい,時間領域(CVRR),周波数領域(LF/HF),非線形システム(SD1/SD2)の3指標で,インカム使用時を含む介護時のストレスを特養Hで調査した.その結果, 排せつ介助,おむつ交換など,いわゆる3K(きつい,汚い,危険)とされる介護以上に,事務所等への電話,職員間の会話(特に看護師相手),脈拍・血圧測定などの身体的接触を伴う介護,居室での一対一の介助において,精神的ストレスが高いという結果が得られた.また,一部の職員はインカム使用時のストレスが有意に高かった(ただし,これは会話内容にも起因した結果と考えられる).
以上,インカムの導入は職員間の連携を促し,無駄な移動を減らすことのできる身体的な負担軽減に寄与する.また,精神的負担軽減についても,介護現場のストレスが対人的な関係性に大きく起因する結果から,チームケアや職員間の連携に寄与するインカムの導入はが精神的ストレスの改善においても介護現場の労働環境の改善に有効であることを明らかにした.