イギリスの住宅政策と非営利組織HAに関する研究

行政と連携して作用する非営利組織による社会住宅供給の仕組みを学ぶ

HA(ハウジングアソシエーション)とは?
移民の多いイギリスでは19世紀末ごろから社会住宅の供給が活発に行われてきましたが、その中で住宅供給の中心的存在を確立していったのがハウジングアソシエーションという非営利組織です。このハウジングアソシエーションの活動内容として特筆すべきは、社会的に弱い立場の人に住宅を提供するための資金の一部を、自社で行った一般の住宅販売や賃貸で得た利益から賄うという、いわば自給自足的資金繰りをしているということです。こういった自社で得た利益と外部からの補助金を上手く掛け合わせて住宅供給を行っている組織からその仕組みを学ぶことは、日本の社会住宅供給の仕組みを見直す上で有益なことのように考えられます。そこで現在行っているのがG15というイギリスの大手ハウジングアソシエーション群の企業比較をもとにその仕組みを紐解いていくという研究です。

 

HAの活動の多様性
ハウジングアソシエーションによって支援を受ける対象者は幅広く、その支援内容は多岐に渡っています。高齢者や障がいを持っているなどの理由で支援を受ける方たちだけでなく、シングルマザーやLGBTの方に対する支援であったり、薬物依存者、元受刑者の社会復帰のための活動など現代社会に対応し対象者の間口を広げていることがわかります。実際の活動内容としても、社会住宅の供給だけでなくそれに付随して生活のサポートまで行ったりと対象者のニーズに合わせた手厚いサポートが受けられることが特徴的といえます。地域に根付いたコミュニティスペースを開設してハウジングアソシエーションの関係者だけでなく地域の人々も利用可能な場や機会を提供する場合もあり(例えば最近では高齢者にプログラミングを教える習い事があったり)、住宅を供給するただの不動産業務にとどまっていないのです。こういった柔軟な活動というのはハウジングアソシエーションが企業として活動し、競合他社が存在することで高い質を保った価値を提供できていると考えられます。こういった社会システムの在り方を学び取り、日本でのシステムに取り込むことを目指し研究を進めています。

(角田 悠衣)